健康・安全編

1 自然と共存する家は可能か?

日本は高温多湿の国だ。むかしから日本の家屋は、床を高くして、湿気がこもらないようにしたり、開口部を大きくとって風の通り道をつくるなど、先人の知恵が生かされたつくりになっていた。内装材も自然の素材で、湿気を調節する役目を担っていた。では、現代の住宅はどうか。敷地も狭く、家が密集して風も通らない。日照権の問題が時折新聞をにぎわすほどだ。日差しの確保もままならない。密閉した住宅に住まうことから、さまざまな問題も指摘されている。健康で安全、快適な住まいにするために、現代の住宅にはどんな知恵や工夫が必要なのかを考えながら、自然と共存する家づくりの方法を探る。

2 有害化学物質対策

現代の住宅の特長をひと言で表すと、高気密・高断熱の家ということになる。言い換えると、空気の流れない家でもある。新建材や内装材、接着剤などから発散する有害化学物質は、シックハウス症候群や化学物質過敏症の原因とされ、大きな社会問題になっている。室内空気汚染とその対策は、きわめて現代的な住宅問題だ。
背景には、高度経済成長による都市部への人口の加速度的集中がある。昭和35年頃から住宅の供給は焦眉の急の課題となり、各地に団地が林立した。しかし、自然素材の建材は生産にも輸入にも限界がある。新建材はこのような中で生まれた。防音性や難燃性が追及され、化学物質の有害性についての法の規制はなかったといってもいい。
平成12年の建築基準法改正で、ようやく室内空気汚染にメスが入れられ、有害化学物質を含む建材、内装材、接着材、断熱材などは、大幅に使用規制を受ける。住まいの環境が大きく改善されたことは間違いない。だが、家具などに使用する接着剤に含まれる有害物質については、規制の対象外だし、室内で多くの人が呼吸するだけでも二酸化炭素が充満することを忘れてはならない。風と空気が流れる家は、家づくりの基本だ。

3 断熱と省エネの話

高気密・高断熱の家とは、熱を遮断し、空気の流れを遮断する魔法瓶のような家ということになる。
日本の家づくりの、ここ十数年の流れをみるかぎり、高気密・高断熱は冷暖房効率がよく省エネだ、という考え方で推移してきた。次世代省エネ基準も同様。しかし、省エネとは何か、考え直す時代になっている。冷暖房が少なくても快適な室温を保つ工夫をするのも省エネだし、熱源を安くしたり、太陽光や風力を利用するのも省エネだ。これからは、木材やリサイクル材の調湿機能を利用したり、植栽で夏の強い日差しを遮り、冬のやわらかな日差しをとるなど、自然を利用した「呼吸する」家づくりをしたいもの。

4 バリアフリーは住宅の基本仕様

バリアフリーの考えは、ここ数年で急速に進んだ。住まいはユニバーサルデザインにするのが主流になりつつある。段差の解消、手すりの設置、廊下の幅、浴室の広さなど、ローンの際に、低金利や割増融資が適用される条件は、クリアしておきたい。ハードを整備したうえで、これからはソフトを考える時代。高齢者のライフスタイルは?生きがいは?話し相手や遊び相手はいる?など。例えば、お風呂。高齢者が入浴するのは、大変なエネルギーが要るので、なかなか入らなくなる。しかし、週1回でもデイホームに行くとなれば、お風呂にも入るようになる。大事なのは設備を整えることではなく、それを利用する生活を考えてあげることだ。

5 防犯のためのコストも忘れずに

泥棒や空き巣の被害が急増している。立地条件や周辺の状況にもよるが、「泥棒に狙われない家」は、人目につきやすく、侵入に手間がかかる家だ。さらに、開口部はすべて防犯仕様とする。センサーライトや防犯カメラを設置し、備えが万全な家であると思わせる。防犯機能は、今や住宅の基本性能になっている。新築の際は、防犯のためのコストも忘れずに計画する。

引用:「家づくりの基礎知識」(監修:中村義平二 発行:建築資料研究社)